飛雲会では、「展覧会部」「講習会部」「作品研究部」「厚生部」「資質研修部」の5つの部に分かれて、さまざまな活動を行っています。2023年のそれぞれの部の活動内容をご紹介します。
展覧会部
第76回目となる「現代書の総合展」飛雲展を開催しました。
「飛雲会の作家たちはそれぞれ強い自覚を持ち、新たな書作品を生み出すため挑んでいます。」(会長案内文より)
コロナ禍を乗りこえて会の力を結集し、観る人に飛雲会の存在を示した3日間でした。
開会初日より後援団体、書道団体、文化人などを初め多くの方の来訪があり、来観者数も1000人を超えました。
今回は役員作品51点と故人の作品は1階を展示場所とし、2階には入賞者と理事の一部、同人、準同人、一般公募の作品を陳列。全作品一段掛で間隔をゆったりとった明るい陳列会場となりました。
役員の作品展示(本館1階)
特別企画「作品解説会」(本館1階展示室)
講師は前田敦子副会長。昨年の「前衛書講座」に続き今回は実作品を元に前衛書とはどういうものか、その見方、作り方を初心者にもわかりやすく解説。会長を初め役員作品をもとに着眼点などインタビューも交えながらお話しいただきました。参加者約100名。前衛書を目指す飛雲会の歴史についても説明がありました。
特別企画「作品解説会」(本館1階展示室)
表彰式・祝賀会(ラッセホール)
表彰式では後援五団体代表から寄託賞授与があり、兵庫県芸術文化課長・神戸市文化交流課長の祝辞を受けました。受賞者それぞれ喜びを胸に次の活動へ決意を固める場となりました。
表彰式後会場を移して祝賀会を実施。神戸市民文化振興財団理事長、神戸新聞社事業局長がご臨席賜り、ご祝辞まで頂戴し、祝賀飛雲会員の懇親時間を持ちました。受賞者一人ずつを呼名紹介し壇上で大きな祝福の拍手を贈りました。85名出席。
作品を作り、発表する。その中で切磋琢磨し成長していく。作家の原点である場を一歩ずつ前へ進めたいと追求してきた76回展も一段落しました。さらに展覧会活動を通してお互いの交流を深めてきたことも大きな意味を持ちます。皆さんの協力があってこそ有意義な展覧会ができたと深く感謝申し上げます。
来年の第77回展は令和6年10月18日(金)~20日(日)原田の森ギャラリーで実施予定です。さらに磨かれ、意欲的な作品発表を期待するとともに展覧会開催へのご協力をお願いいたします。
講習会部
コロナ禍しばらく中止したり、縮小したりしていましたが、今年度ようやく完全な形で飛雲会夏期書道講習会(兵庫県中央労働センター)を実施することができました。
「摩崖の書について」、「宇野雪村賞作品制作(実技)」、「開通褒斜道刻石(臨書実技)」、「西狭頌(臨書実技)」について、8月25日(金)26日(土)の2日間実施し学習を深めることができました。
この講習会には飛雲会の同人、準同人、会員、そして一般の方、高校生も参加されました。普段の練習とは違い、多くの講師の先生方が気さくに作品制作の指導にあたられ、新たな発見があり、今後の書道芸術の作品づくりの糧となったのではと思います。
作品研究部
今年も令和5年度の飛雲会最後の行事として、主に毎日書道展に向けた作品研究会が、3月23日(土)、元町駅北側の兵庫県学校厚生会館にて、午前・午後の二部制で開催された。
午前中の第一部では、漢字部・前衛書部のそれぞれ二名の先生方に席上揮毫をして頂いた。最初に揮毫して頂いたのは漢字部の審査会員である島田啓敬先生。甲骨・金文・隷書の作品を通じ、それぞれの線の変化のつけ方や紙のサイズに合わせた表現方法を幅広く学んだ。毎日書道展漢字部の審査員の大多数を占める創玄書道会の書風を意識しながら、ほのかに香る上羅流に懐かしさを感じるとともに百パーセント創玄の書風を意識するのではなく、自己表現の大切さもあわせて学んだ。
席上揮毫の様子(漢字部審査会員・島田啓敬先生)
続いて二人目は、漢字部審査会員の岸涛風先生による行草体と隷書による揮毫が行われた。作品制作の中で大変重要な運筆の際の呼吸法における間の取り方、文字から文字に移行する際の余韻を楽しみながらの流れの作り方を含めて普段の作品制作時に忘れがちな書の基本について解りやすく学んだ。
席上揮毫の様子(漢字部審査会員・岸涛風先生)
三番手は前衛書部審査会員の左右津安輝子先生による大胆かつ繊細な作品制作が展開された。黒い部分を強調した墨量の多い部分に対し、細くキレのある線と渇筆による軽やかな部分の相対する作品には「作品の明と暗」の表現方法を学んだ。
席上揮毫の様子(前衛書部審査会員・左右津安輝子先生)
第一部の締めに登場されたのは前衛書部審査会員の中西浩暘先生。前述の三先生方が多数の揮毫をして頂いた影響で揮毫をして頂く時間があまりまかった事もあったが、その中で何故我々は前衛書を書くのか?前衛書を書く上で大切な「書の美」についてしっかり意識して書いているか?等、書く事以前の制作前の心構えについてから制作のあり方まで詳しく解説頂いた。
時間の都合上、揮毫が少なくなり、先生にあまり実作で書いて頂けなかった事は、先生に申し訳なかったと当時に参加者としても大変残念な事であったが、普段書く事だけにしか意識のない制作者にとって、大変重要なお話を頂いた。
午後からの第二部は作品の合評会。昨年度は毎日書道展漢字部の公募作品の提供者が皆無であったこともあり、今年度も参加者があるのであろうかと心配された漢字部に今回は二名の参加者を得た。それぞれに個性溢れる作風であったため、二点とは思えない幅広い先生方の講評を頂き、参加者一同が漢字の作品制作の知識を深めた。
続いて前衛書作品は、公募・会友合わせて十一名の参加で例年より、やや少なめに感じたが、こちらも個性豊かなバラエティーに富んだ作品が多く見られ、多種多様な表現方法について講師の先生方の詳しい解説を頂く事が出来た。
最後に毎日書道会「会員」の作品(漢字部二名・前衛書部四名)の作品に移った。ここでも漢字部二点の作風が異なった作風であったこともあり、前衛書も含めてバラエティー豊かな作品群(全十九点)に、講師の先生方より更に質の高い評を得ることが出来て参加者それぞれに大変参考になったことであろう。
今回の作品研究会で学んだ方達の毎日書道展での出品作品が高評価を得る事を願うばかりである。
合評会の様子
厚生部
美術鑑賞会「上田桑鳩の足跡をたどる」 を 11月 12日(日)に 実施しました。
三木市立堀光美術館において開催中の『特別企画 郷土の書人・画人・教育者 上田桑嶋展』を鑑賞しました。
上田家から寄贈された書作品、スケッチブック、教科書などが展示されていました。また飛雲会より寄贈した錦谷 (雅号)時代をはじめ、昭和初期の作品も展示されていました。
会場で牛丸好一飛雲会会長による作品解説がありました。上田桑鳩の初期から最晩年に至る多彩な桑鳩芸術の全容に触れ、桑鳩の書に対峙する姿勢を学ぶことができました。64人の参加があり盛会でした。
多彩な桑鳩芸術
集合写真
資質研修部
10月22日(日)学校厚生会館にて「漢字かな交じりの書」の研究会を実施しました。
当日は毎日書道展審査会員の阪口大儒先生のご指導のもと、53名の受講者が学びました。
午前の部の講義では漢字かな交じりの書を表現するにあたっての古典の書風を基にして漢字とかなを調和させた作品の作り方をたくさんの参考作品を例に挙げて教えていただきました。
一番大切なことは、漢字とかなを調和させることでそれぞれの字形や線質、書風を歩み寄らせることだということでした。また固定観念に縛られるのではなく、自分の作りたい作品をイメージして、用具用材や紙面構成などもいろいろ試してみるのが良いとのことです。
日頃から書きたいと思う作品のイメージが自由に発想できるように、書だけでなく自然の風景の美しさなどいろいろな美しいものを観て感性を磨くことが大切だと仰っていました。
阪口先生が書かれた参考作品をたくさん見せて頂きました。
午後の部は講師の阪口先生と助講師の先生のお二人が受講者一人一人の机を回って、その傍でそれぞれの作品に合わせて各人の筆を使って作者のイメージを大切にして参考手本を書いて下さり、アドバイスを頂いたりして筆の扱い方や、墨の使い方などについても丁寧にご指導いただきました。
阪口先生と米田先生が受講者一人一人の机をまわり、丁寧にご指導くださいました。
午後の部の後半は、阪口先生が参考作品を揮毫される様子を観て、筆の使い方や構成の仕方など少人数に区切ってゆっくり見せて頂き、気軽に質問などもしながら有意義な時間を過ごしました。
最後にまとめとして、漢字かな交じりの書を魅力ある作品にするには、①何を素材にしてもよい ②日頃から魅力ある美しいものをしっかり観る ③人の真似して書くことにとどまらず自分のリズムに昇華させていく ④古典臨書が大切 と仰っていました。
漢字かな交じりの書は自由でありながら、阪口先生は作品に対して可読性を大切にされていて、古典を大切にされる思い、書く力だけでなく観る力を養うことの重要性を熱くお話してくださいました。書のどの分野においても、古典の臨書を大切に自分の世界をつくっていくことが大切であることを再認識しました。
お二人の講師の先生のわかりやすく、熱心なご指導のお蔭で心に残る有意義な研究会になりました。
飛雲誌の漢字かな交じりの書の課題にも積極的に取り組んでいこうと思いました。